どうも、ハラミ(@harami_blog)と申します!
僕は数年前まで鍼灸師として働いていましたが、皆さんは『鍼灸』がどんなものか知っていますか?

ツボに針を刺すってことくらいしか知らないかな~
このブログを見て頂いている方はほとんどが看護業界の方だと思いますが、今回は
- 鍼灸とは何なのか
- 鍼灸の効果
- 鍼灸師という仕事の将来性
について解説していきます。
看護やリハビリから鍼灸などの代替医療に転職する方も結構いるので、将来の選択肢として、参考にしてみてください。
看護学校については過去の記事で何度か紹介しているのでよかったらそちらもどうぞ!
このブログの執筆者

鍼灸とはどういうものなのか
鍼灸というものを一言で表すと
針(鍼)とお灸を使って自律神経を整え、身体が持っている生命力(回復力)を向上させることを目的とした医療と言えます。
身体を回復させる機序(メカニズム)はのちほど解説しますが、鍼灸やツボというもの自体に薬のような効果があるわけではなく、身体が持っている回復力をパワーアップさせる方法というのが僕の認識です。
では次に、よく聞く『ツボ』や『気』といった概念(考え方)について紹介していきます。
鍼灸でよく聞く用語 ①ツボ
ツボとは、身体中に存在している治療点のことを指していて、正式には『経穴』と呼ばれるものです。
ちょっと胡散臭いようにも感じますが、WHO(世界保健機関)でもきちんと認められている概念で、人体には361個のツボ(経穴)が存在しています。
先ほどツボ自体に薬のような効果があるわけではないと書きましたが、東洋医学の世界では、ツボひとつひとつに効果が示されています。
例えば有名なツボで『足三里』というものがあります。

この足三里というツボには
- 胃炎などの慢性消化器疾患
- 自律神経失調症
- 脳卒中の後遺症(マヒなど)
という効果があるとされています。
じゃあなぜ足三里にこれらの効果があると言われているのか、それは
『経験』によって証明されたものだからです。

経験?!
なんか曖昧じゃない???
シンプルすぎて「胡散臭い!」と思った方、分かります、落ち着いてください笑
『経験』というと「理由として弱くない?」と思っちゃうんですが、鍼灸を含めた『東洋医学の歴史』というのは、数千年単位の歴史です。
『中国3000年の歴史』って言葉を一度は聞いたことあると思いますが、まさに鍼灸や東洋医学の歴史も約3000年レベルで続いているわけです。
つまり『経験=約3000年分の実験結果』ということです。
一度や二度試しただけであれば信憑性は薄いですが、3000年分のデータの蓄積であれば、十分エビデンス(科学的根拠)として認められます。
こういった長期間の経験に基づいた医学のことを『経験医学』と言います。
今はAIやビッグデータの時代と言われますが、3000年のデータと言うと、超・超・超ビッグデータです。
昔の鍼灸師たちが胃腸の症状を訴える患者さんの色んな部位に鍼やらお灸やらを繰り返して治療効果を確かめてきたと考えると、凄まじいですね。
ここまでをまとめると、
- ツボ(経穴)はそれぞれが治療効果を持っている
- その効果は約3000年間の実験によって証明されてきた
- その実績からWHOで361個のツボが『エビデンスあり』と認められている
ということになります。
鍼灸でよく聞く用語 ②気
次は『気』という概念について説明します。

来た!一番胡散臭いやつ!!
落ち着いてください笑
これに関する僕の意見はあとで書くとして、東洋医学には『気』という概念が大きく関わっています。
ではこの『気』とは何か、一言でいうと、
体内を巡るエネルギーを指します。
東洋医学の世界では人体の中には
- 気
- 血
- 水
という3つの物質があるとされています。

これを個人的な解釈で現代的な物質に置き換えてみると
- 気:エネルギー
- 血:血液
- 水:組織液(リンパ液)
となります。
血=血液、水=組織液はイメージしやすいと思いますが、気=エネルギーに関しては、僕は血液中を流れる酸素や二酸化炭素・各種栄養素のようなイメージを持っています。
ただし東洋医学の概念でいうと、血中に『気』というエネルギー物質が流れているという解釈の方が近いので、『体内を巡っているエネルギー』という解釈で説明していきます。
この『気』が何をしているかと言うと、体内の臓器(東洋医学では臓腑と言います)を動かすということを行っています。
なので東洋医学では、『気』の流れが悪くなってしまうと臓器が栄養されず、病気になったり痛みが出たりするという考え方をします。
痛みは『気』の流れが悪くなっているサインなので、その部分に針やお灸をすることで『気』の流れを再開させてあげるというのが鍼灸治療になるわけですね。
ということで『鍼灸とは何なのか』『ツボ』『気』についてざっくり説明してみました。
ここからは、現代医学的な視点から見た鍼灸のメカニズムを説明していきます。
鍼灸の効果とメカニズム
これに関してはざっくり2つの要素に分けることが出来ます。
それが、
- 鍼orお灸を使って身体に微細損傷を与え回復を促す
- 自律神経の調節
の2つです。それぞれ解説していきます。
鍼灸のメカニズム ①鍼orお灸を使って身体に微細損傷を与え回復を促す
鍼治療・灸治療とは言いますが、鍼やお灸は身体にダメージを負わせるものです。
『身体に鍼を刺す・燃えたお灸を身体の上に置く』って、シンプルに考えてケガしますよね。
では何故そんなことをするのかと言うと、
- 鍼で刺された部分に微細な炎症が起こり、それを修復するために血流が良くなって白血球などの免疫細胞が送り込まれる
- 小さな火傷をした部分に炎症が起こり、それを修復するために血流が良くなって白血球などの免疫細胞が送り込まれる
という反応を起こそうとしています。つまり、
- 血流が良くなる➡ 新鮮な酸素を送り込む、たまった老廃物を流す
- 免疫細胞が送り込まれる ➡ 免疫細胞が活性化されて免疫力アップ
という効果を狙ってるというわけです!
それを『身体の持っている回復力を向上させる』と表現しているんですね。
あえてダメージを与えるってところが画期的で面白いと思いませんか?
鍼灸のメカニズム ②自律神経の調節
次に、自律神経の調節作用についてです。
ちょこっと解剖学ですが、人の体内には、
- 運動神経(体を動かす)
- 感覚神経(五感をキャッチする)
- 自律神経(臓器を動かす)
という3つの神経が存在しています。
さらに自律神経は①興奮作用のある『交感神経』と、②リラックス作用のある『副交感神経』の2種類に分かれるんですが、鍼灸は主に副交感神経に作用することが分かっています。
なぜ副交感神経が活発になるかはかなり難しい話なので今回は省きますが、鍼やお灸のダメージによって最初は『交感神経』が働くんですが、その後段々と『副交感神経』が活発になるということが実験で分かっているんですね。
つまり、鍼灸には『リラックス効果』がある、ということです。
今の時代、ストレスや不規則な生活でどうしても身体は興奮状態(交感神経が活発な状態)になりがちです。
そのため不眠や消化機能の低下、免疫低下などが起こり病気になってしまうんですが、鍼灸には身体を強制的にリラックス状態(副交感神経が活発な状態)にする効果があるので、血流アップと併せて身体を休ませることができる治療法と言えます。
ツボの概念を現代医学で考えてみる
ここまで東洋医学的な話と現代医学的な話をしてきました。
東洋医学と西洋医学は考え方が大きく違うのでその2つを混ぜて考えるということにアレルギーを起こす人もいたりするんですが、あくまで個人的な意見として書いていきます。
『ツボ』についての解説で、それぞれのツボには色んな効果があると書きました。
そしてそれは長期間にわたる経験によって明らかにされてきたと書きましたが、現代医学的に考えると、それらの効果は主に『自律神経調整作用』によるものだと思います。
例えば消化器疾患で考えると、昔はストレスだけでなく飢餓などもあったと思うんですが、どちらも身体を(交感神経が優位な)興奮状態にする原因です。
そして興奮状態が続くと、胃粘液の分泌が低下し胃が荒れる・消化器系への血液供給がダウンし機能低下するといった変化が現れます。
そういった時に鍼灸治療を行ったことで身体が『リラックス状態』へと導かれ、胃粘液の分泌アップや消化器系への血流アップなどが起こり、回復したんだと思います。
けれど当時はその理屈が判明してなかったために『気』や『ツボ』といった独自の概念が出来上がっていったんだと僕は思っています。
この部分に関してはツボというものをそのまま受け入れるタイプと現代医学の理論に置き換えたいタイプに分かれがちで、鍼灸師の中でも東洋医学派と現代医学派は仲が悪かったりします笑
まぁツボにせよ自律神経にせよ、確かに効果があるものという点においては間違いないので、鍼灸という治療法自体はなんら怪しいものではないってことは知っておいて欲しい部分ですね!
鍼灸師という仕事の将来性
最後に鍼灸の将来性について個人的な意見を書いておきます。
『過去に鍼灸を受けたことのある人』の割合は常に7~9%くらいです。
やはりマッサージと違って鍼灸には怖い・痛そうというイメージがまとわりつくので、かなり低い受療率になってます。
そんな鍼灸業界ですが、僕は将来性があると思っています。
理由としては
- 日本の高齢化と医療の地域分散化が進んでいる
- 将来的にもAI・ロボットが代替することは難しいのではと思う
の2つが挙げられます。
日本の高齢化と医療の地域分散化が進んでいる
1つ目の『日本の高齢化と医療の地域分散化が進んでいる』に関してですが、皆さんご存じの通り、今日本は高齢化・人口減少への道を爆走中です。
進み続ける高齢化の影響で膨らむ医療費をできるだけ削減するため、国は『地域包括医療』という、高齢者にできるだけ自宅周辺の施設や資源といった、病院以外の場を活用してもらうというシステムを進めています。
その中にはデイサービスや老人ホームなどが含まれるんですが、身体の不調に関しては、鍼灸がそこに参入していける可能性が十分にあると思います。
さらに今後は予防医学もどんどん発達していくはずなので、鍼灸の免疫力・生命力を高めるという機能が注目される可能性はあると思います!
将来的にもAI・ロボットが代替することは難しいのではと思う
2つめの理由ですが、鍼灸という技術にはとにかく繊細さが要求されます。
中国式の鍼灸の場合は本当に田植えをするみたいにバシバシと針を打つので、機械でも再現可能だと思います。
しかし日本式の『痛くない鍼』を再現しようとした場合にはかなり繊細なタッチが要求されるので、そこを再現するのはちょっとまだ難しいのでは?と思う部分が一点。
さらに、東洋医学の理論を重視した治療の場合ですが、治療前の診察を再現することがAIやロボットではかなり難しいと思います。
というのも、東洋医学的な診察には様々な種類があって
- 顔色を診るだけでなく、顔のどの部分に異常(肌荒れなど)があるかどうかでどの内臓に異常があるか推測する
- 手首の脈を触って、どの内臓に異常があるか推察する。しかも脈の分類が十数種類もある。
- 腹部を触って、「この部分に力がないから〇〇が弱ってる、この部分が汗で湿ってるから〇〇に異常がある」
というように、かなり種類があって、かつ人間でも判断が難しいものばかりです。
(現在の鍼灸師で出来る人はほとんどいないというのが僕の持論です、笑)
AIはデータの集積によって答えを出す仕組みなので、言い方は悪いですが、曖昧なものが多すぎて診断基準すら設けられないと思います。
以上2点の理由から、鍼灸がAIやロボットに代替されることはほぼ無いと思ってます。
まとめ
今回は、
- 鍼灸とはなんなのか
- 鍼灸の効果
- 鍼灸師の将来性
について書いていきました。
知らないと怪しい鍼灸の世界ですが、日本含め多くの海外で科学的根拠が実証され、医療として活用されています。
僕は一旦、鍼灸師としてのキャリアを終えましたが、これから看護師となって十分な経験を積んだら、将来的には『鍼灸と看護のハイブリッド治療家』になって超高齢日本社会を生き抜いていこうと思っています。
このブログを見て下さるほとんどの方は看護関係の方だと思いますが、将来の選択のひとつとして、『鍼灸師』という道を考えてみてもいいんじゃないでしょうか。
頑張って人生100年時代を乗り越えましょう!
ではこの辺で!!